Capital Insight 編集部
株式投資で利益が出たら、「確定申告が必要なの?」「会社員でも自分でやるの?」と戸惑う場面は多いものです。特に新NISAの普及で初めて株式・投資信託に触れる会社員が増え、確定申告の要否判断や口座選びで悩むケースが急増しています。結論から言えば、多くの会社員は特定口座(源泉徴収あり)を選べば原則として確定申告不要ですが、「配当控除で還付を受けたい」「損益通算で節税したい」「複数口座の損益を合算したい」といった場合には、あえて確定申告を行った方が得になるケースもあります。
本記事では、会社員が株式投資をしたときの確定申告について、要否判断・口座選び・配当の課税方式・損益通算・繰越控除・確定申告の実務手順・電子申告(e-Tax)・2025年分申告(2026年2月16日〜3月16日提出)の注意点までを体系的に整理します。参照した公開情報は、国税庁、freee、マネーフォワード、SBI証券、楽天証券、三井住友銀行Money VIVA、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、松井証券、日本経済新聞、PwC、EY、navigator Japanなど国内外の信頼性の高い公開メディアです。特定銘柄・特定戦略を推奨するものではなく、確定申告の判断フレームワークとして読むのが本記事の位置づけです。
会社員が株で確定申告をしなくていい3つのケース
会社員(給与所得者)が、株式投資による利益があっても確定申告が不要となるのは、以下のいずれかに該当する場合です。
ケース①:特定口座(源泉徴収あり)を利用している
証券会社の特定口座で「源泉徴収あり」を選択していれば、売却益・配当金にかかる税金は証券会社が自動的に源泉徴収して納税してくれるため、確定申告は原則不要です。会社員にとって最も一般的で負担の少ない設定です。
ケース②:新NISA・iDeCoの口座で運用
新NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)やiDeCoの口座で得た利益・配当は非課税のため、確定申告の対象外です。新NISA口座内の利益はそもそも税金がかからないので、計算・申告の必要がありません。
ケース③:給与所得以外の所得が一定額以下
一定水準以下の給与収入の会社員で、副業・株式投資・雑所得などを合計した「給与以外の所得」が所得税法上の基準額以下なら、所得税の確定申告は不要です(具体的な金額基準は国税庁公式で最新値を確認)。ただしこのルールは所得税のみで、住民税の申告は別途必要となる点に注意。詳細はお住まいの市区町村窓口で確認しましょう。
会社員が株で確定申告をすべきケース
一方で、以下のようなケースではあえて確定申告をするのが有利(または義務)となります。
① 損失を翌年以降に繰り越したい(繰越控除)
年間の売買で損失が出た場合、確定申告をすればその損失を翌年以降に繰り越して利益と相殺できる「繰越控除」が利用可能です(繰越可能期間・具体的な要件は国税庁公式で確認)。損失を翌年以降の節税に活用できる重要な制度です。
② 複数口座の損益を合算したい(損益通算)
A証券で利益、B証券で損失が出たような場合、確定申告で損益通算することで税金を圧縮できます。源泉徴収ありの口座でも、申告すれば他口座との合算が可能です。
③ 配当控除を受けたい(総合課税)
国内株式の配当金について総合課税を選んで申告すると、「配当控除」(所得税・住民税から一定割合を税額控除)が適用されます。所得税率が低い層(給与所得の少ない会社員)では、申告した方が税負担が減るケースがあります。
④ 特定口座(源泉徴収なし)・一般口座で取引している
源泉徴収なしの特定口座や一般口座で利益が出た場合は、原則自分で確定申告が必要です(給与以外の所得に関する申告不要ルールに該当する場合を除く)。
⑤ 外国株式の配当がある(外国税額控除)
米国株などを保有していると、米国で源泉徴収された税金と日本の税金で二重課税が発生。確定申告で「外国税額控除」を申請すれば、一部を取り戻せます。米国株の買い方・税務の詳細は米国債の買い方と利回り完全ガイド、米国株の始め方完全ガイドを参照してください。
⑥ 住宅ローン控除の初年度・医療費控除・ふるさと納税など
他の理由で確定申告を行う予定があるなら、株式の損益も合わせて申告する方が楽で、損益通算や配当控除も一度に処理できます。
口座の種類を理解する|3種類の違い
証券会社で開設できる口座は、主に3種類に分かれます。
① 特定口座(源泉徴収あり)
- 証券会社が1年分の損益を集計+自動的に税金を源泉徴収
- 確定申告は原則不要
- 会社員の大半が選ぶ最もラクな方式
- 申告することで損益通算・繰越控除・配当控除も可能(選択可)
② 特定口座(源泉徴収なし)
- 証券会社が1年分の損益を集計してくれるが、税金は自分で納める
- 年間取引報告書が作成されるため確定申告が楽
- 利益が所得税法上の基準額以下なら所得税申告不要の枠を活用できる
③ 一般口座
- 損益計算を自分で行う必要がある
- 特定口座では扱えない銘柄(ストックオプション等)や、特殊な取引向け
- 初心者にはあまり推奨されない
初めて株式投資を始める会社員にとっては、「特定口座(源泉徴収あり)+新NISA口座」の組み合わせが基本形。細かい税務を気にせず投資に集中できます。口座の違いの詳細は特定口座の源泉徴収あり・なし・一般口座の違い完全ガイドでより詳しく整理しています。
配当金の課税方式|3つの選択肢
国内上場株式の配当金には、3つの課税方式から選択できます。
① 申告不要(源泉徴収で完結)
配当金から申告分離課税の税率で源泉徴収され、確定申告不要で納税が終わります。手間がなく、高所得者はこれが最も有利なケースが多いです。
② 申告分離課税
他の所得と切り離して、配当所得を独立して課税。株式譲渡損益との損益通算が可能になるため、譲渡損がある年に選ばれます。
③ 総合課税
給与所得などと合算して累進課税で課税される方式。配当控除の適用があり、所得税の限界税率が低い層(課税所得が一定以下)なら、この方式が最も有利になるケースがあります。
方式の選び方
どれが有利かは個人の課税所得水準で変わります。年収・給与所得控除・各種控除後の課税所得を把握した上で、国税庁の「所得税の税率」ページで自分の限界税率を確認し、配当控除込みの実質税負担を比較するのが王道です。不安な場合は税理士や税務署の無料相談を活用しましょう。
新NISA口座の配当|非課税で受け取る条件
新NISA口座内の株式・ETFの配当金を非課税で受け取るには、証券会社で「株式数比例配分方式」の受取設定が必要です。以下の設定では課税扱いになり、NISAの非課税メリットが受けられません:
- 登録配当金受領口座方式(全保有株の配当を1つの金融機関口座に)
- 配当金領収証方式(郵便局で現金受取)
- 個別銘柄指定方式(銘柄ごとに振込口座を指定)
新NISA口座を開設したら、必ず「株式数比例配分方式」になっているか確認してください。新NISAの使い分けは新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の使い分け完全ガイドもあわせて参照。
確定申告の実務手順|初心者の7ステップ
ステップ①:必要書類を揃える
- 源泉徴収票(勤務先から発行)
- 特定口座年間取引報告書(証券会社の管理画面からPDFで入手可能)
- 配当金支払通知書(銘柄ごとの配当明細)
- 外国税額控除関係書類(米国株等保有の場合)
- その他の所得証明書・控除証明書(医療費・ふるさと納税・生命保険料控除等)
- マイナンバー・身分証明書
- 還付金の振込先口座情報
ステップ②:e-Tax(電子申告)の準備
現代の確定申告はe-Tax(電子申告)が主流。スマホ+マイナンバーカードでほぼ完結します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」、スマホアプリ、またはマネーフォワード・freeeなどの会計ソフトのいずれかを選択。
ステップ③:申告方式を選ぶ
株式譲渡益・配当金それぞれに対して、申告分離課税/総合課税/申告不要を選びます。有利な選択肢をシミュレーションで比較(確定申告書等作成コーナーは自動計算してくれる)。
ステップ④:特定口座年間取引報告書の内容を入力
証券会社が発行する年間取引報告書の数値(譲渡所得、配当所得、源泉徴収税額など)を画面に入力。複数口座の場合は全てを入力して合算。
ステップ⑤:控除の入力
医療費控除・ふるさと納税(寄附金控除)・生命保険料控除などを入力。株と関係ない控除も合わせて申告すると、トータルの税金が減る可能性あり。
ステップ⑥:計算結果を確認して提出
システムが自動で税額を計算。還付額・追加納付額が表示される。確認後、電子送信(e-Tax)または印刷して郵送で提出。
ステップ⑦:還付金を待つ(該当者のみ)
還付がある場合、e-Taxなら約2〜3週間、郵送なら1〜2か月で指定口座に振り込まれます。
2026年(令和8年)確定申告の変更点
2026年(2025年分)の確定申告には、最新の税制改正による各種控除制度の見直しが適用される可能性があります。基礎控除・給与所得控除・扶養・特定親族に関する控除制度の見直しなどが議論・施行される動きが継続しているため、最新の詳細は国税庁公式で必ず確認してください。税制改正は毎年あるため、国税庁公式の最新確定申告ページと、日本経済新聞・EYなどの税制改正解説記事で最新情報を確認するのが鉄則です。投資家に影響する変更点は2026年度税制改正が投資家に与える影響でも整理しています。
確定申告の期限と提出方法
申告期限
2025年(令和7年)分の所得税確定申告は、2026年2月16日(月)〜3月16日(月)が期間(土日の関係で期限日は年によって変動。正確な日程は国税庁公式で確認)。還付申告(税金を返してもらうだけ)は、1月から早めに提出することも可能です。
提出方法
- e-Tax(電子申告):マイナンバーカード+スマホ or ICカードリーダーで自宅完結、還付スピードが最速
- 税務署窓口提出:申告書を印刷して税務署で提出、窓口で質問もできる
- 郵送:税務署宛に郵送、消印で期限判定
初心者にとってe-Taxは利便性と還付スピードの両面で有力な選択肢の一つです。
確定申告で使える便利ツール
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー:公式の無料ツール、画面の質問に答えていくだけで書類完成
- マネーフォワード クラウド確定申告:個人事業主・副業持ち会社員に人気、株式も扱える
- freee 確定申告:UI/UXが直感的、初心者におすすめ
- 弥生 青色申告オンライン:伝統的な会計ソフトのオンライン版
いずれも月額/年額の手頃な費用プラン、または無料プランで会社員の株式申告は対応可能です(最新の料金プランは各公式で確認)。
よくある間違い・注意点
- 特定口座(源泉徴収あり)なら絶対に申告不要と思い込む:損益通算・配当控除のために申告したほうが有利なケースあり
- 住民税の申告を忘れる:所得税の申告不要ルールは住民税には適用されない、別途申告が必要
- 国民健康保険料への影響を見落とす:確定申告で所得を増やすと、翌年の国保料・保育料・児童手当などが影響を受けるケースあり
- NISA口座の損失は繰越できない:新NISAの損失は他の課税口座と損益通算・繰越控除できない
- 配当金受取方式の設定ミス:「株式数比例配分方式」にしていないとNISA非課税が享受できない
- 外国税額控除の申請漏れ:米国株配当の二重課税を放置
- 申告期限に間に合わない:期限後申告は無申告加算税の対象、還付申告は期限後でもOK
- 扶養家族の所得ルール:学生・主婦が株式で利益を出すと扶養から外れる可能性
ケーススタディ|会社員別の判断フロー
ケース①:中位給与層、特定口座源泉徴収ありで一定の年間利益
→ 原則として確定申告不要。ただし、総合課税で配当控除を適用する方が有利かシミュレーションすると、還付の可能性あり。配当金が含まれるなら比較検討する価値あり。
ケース②:中〜上位給与層、A証券で利益、B証券で損失
→ 確定申告で損益通算するのが有利。両方源泉徴収ありでも、申告すれば税金が軽減される。
ケース③:米国株配当あり(米国源泉徴収発生)
→ 外国税額控除の申告で二重課税を部分的に取り戻せる。
ケース④:株式譲渡損がある年
→ 確定申告で損失を繰越控除すると、翌年以降所定の期間内の利益と相殺できる。申告しないと繰越権利が消滅。
ケース⑤:新NISAだけで運用
→ 新NISAは非課税のため、確定申告は不要。それ以外の副業等の所得を確認するのみ。
税務署・税理士への相談
確定申告に自信がない場合は、以下の相談先を活用しましょう:
- 税務署の電話相談・窓口相談:無料、2月〜3月は混雑
- 税理士の無料相談会:確定申告シーズンに税理士会等が開催
- 確定申告書等作成コーナーのQ&A:国税庁の公式ヘルプ
- 証券会社のサポート:口座関連の書類・数値については各証券会社のサポート
- 税理士への有料依頼:複雑なケース(副業・不動産・海外所得など)では検討価値あり
無申告・申告漏れのリスク
確定申告が必要なのに行わない場合、以下のペナルティがあります:
- 無申告加算税:納税額に一定割合を加算して納付
- 延滞税:納期限を過ぎた期間に応じて加算
- 重加算税:意図的な脱税と判断された場合、特に重い加算
- 刑事罰:大規模な脱税は刑事告発の対象
証券会社は税務署に年間取引報告書・支払調書を提出しており、国税庁は個人の株式取引を把握できる立場にあります。「申告しなくてもバレない」という発想は極めて危険。適切な申告・納税を行う姿勢が必須です。
他の資産・戦略との関連
確定申告の判断は、株式だけでなく他の資産クラスとも密接に関わります:
- J-REIT・インフラファンド:配当所得扱い、J-REIT 初心者向け完全ガイド
- 金(ゴールド):譲渡所得扱い、金(ゴールド)投資完全ガイド
- 個人向け国債:利子所得扱い、個人向け国債完全ガイド
- 暗号資産:雑所得(総合課税)、ビットコインの税金と確定申告完全ガイド
- 高配当株:配当所得扱い、高配当株の選び方完全ガイド
投資全体の税務計画は、各資産の課税方式を理解した上で組み立てるのが長期的な節税に直結します。
まとめ|「特定口座(源泉徴収あり)+新NISA」で始め、必要に応じて申告
株式投資を始めた会社員が最初に選ぶべきは、「特定口座(源泉徴収あり)+新NISA口座」の組み合わせ。この設定なら、日々の取引で税金の計算・申告を気にすることなく投資に集中できます。
一方で、損失の繰越・複数口座の損益通算・配当控除・外国税額控除など、あえて確定申告を行うことで税金が軽減されるケースもあります。年1回、年末〜年初のタイミングで「申告した方が得か」をシミュレーション(国税庁の確定申告書等作成コーナー、freee、マネーフォワード等で試算可能)し、有利な方式を選ぶのが賢い投資家の習慣です。
2026年確定申告では、令和7年度税制改正による基礎控除引き上げなど会社員に関わる変更点が複数予定されています。申告期限は例年通り2月16日〜3月15日(正確には年により変動)で、e-Taxの活用で自宅から完結できます。初めての申告でも、国税庁のツールや税務署の無料相談を活用すれば、多くの会社員にとって1〜2時間で完了できる難易度です。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・戦略・申告方式を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。税制は毎年改正され、個別の税務判断は課税所得・扶養状況・他所得など個人ごとに最適解が異なるため、将来の運用成果を保証するものではありません。最新の制度内容・税率・申告期限は、国税庁公式サイトおよび税務署・税理士等の専門家にご確認ください。