Capital Insight 編集部
基準価額が下がったときに「売る」のは正解か
投資信託の基準価額が購入時より下がると、不安になって売却を考える方は少なくありません。しかし、多くの金融機関や運用会社が共通して指摘するのは「基準価額の下落だけを理由に売るのは得策ではない」ということです。
北陸銀行の投資信託コラムでも解説されている通り、基準価額が下がっている状態で安易に売却すると損失が確定してしまい、その後の回復局面で得られたはずの利益を逃す恐れがあります。一時的な下落は長期投資においては通過点であり、売却の判断は価格の動きだけでなく、ファンドの運用方針や自分の投資目的に照らして行うべきです。
基準価額が下がる主な原因
基準価額の変動要因を理解することで、下落時に冷静な判断がしやすくなります。
- 市場全体の下落:株式市場や債券市場全体が下がれば、投資信託の基準価額も連動して下がります。リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)のような全面安の局面がこれに該当します
- 為替変動:海外資産に投資するファンドでは、円高が進むと基準価額が下がる要因になります。為替ヘッジなしのファンドは特に影響を受けます
- 分配金の支払い:分配金が出ると、その分だけ基準価額が下がります。これは資産が減ったわけではなく、ファンドから手元に現金が移っただけです
- ファンド固有の要因:組入銘柄の業績悪化や、ファンドマネージャーの運用判断ミスなど、個別ファンドに起因する下落もあります
売らずに持ち続けるべき3つのケース
以下のケースでは、基準価額が下がっても保有を継続する方が合理的です。
1. 市場全体の下落で、ファンドの運用方針に変化がない
株式市場全体が下落している局面では、ほぼすべてのファンドが下がります。ファンド自体の運用方針やベンチマークとの乖離に問題がなければ、市場の回復とともに基準価額も戻る可能性があります。三菱UFJ銀行の投資コラムでも、基準価額の一時的な下落だけで売買を判断するのは失敗のもとと解説されています。
2. 投資目標まで十分な時間がある
退職資金や教育費など、使う予定が10年以上先であれば、短期的な下落を気にする必要は低いです。過去の実績では、全世界株式インデックスは15年以上保有すればマイナスリターンになったケースがほとんどないというデータがあります。
3. 積立投資(ドルコスト平均法)を続けている
毎月一定額を積み立てている場合、基準価額が下がったときは同じ金額でより多くの口数を購入できます。これがドルコスト平均法の効果で、下落局面は将来のリターンの種をまいている期間ともいえます。
売却を検討すべき4つのケース
一方、以下の状況では売却を前向きに検討する余地があります。
1. ファンドの運用方針が大きく変わった
ファンドマネージャーの交代、投資方針の変更、ベンチマークの変更などがあった場合は、当初の期待と異なる運用になっている可能性があります。
2. ベンチマークに対して長期的にアンダーパフォームしている
3〜5年の期間でベンチマークを大幅に下回り続けているアクティブファンドは、運用力に問題がある可能性があります。インデックスファンドへの乗り換えを検討してもよいでしょう。
3. 信託報酬の低い同等ファンドが登場した
同じ指数に連動するインデックスファンドで、より低コストの商品が登場した場合は、乗り換えによって長期のリターンが改善する可能性があります。
4. 自分のライフプランが変わった
当初の投資目標や期間が変わった場合(例:住宅購入が予定より早まった)は、リスク許容度に応じてポートフォリオを見直す必要があります。
下落時にやるべきこと・やってはいけないこと
| やるべきこと | やってはいけないこと |
|---|---|
| 投資方針を再確認する | パニック売り(感情的な売却) |
| ファンドの運用報告書を確認する | 値動きを毎日チェックして一喜一憂する |
| 積立を継続する(むしろ追加投資の機会) | SNSやニュースの悲観論に流される |
| 必要なら資産配分をリバランスする | 根拠なく「もっと下がるかも」と全売却する |
筆者が金融データ分析の現場で観察してきた中では、下落局面で積立を止めてしまう投資家が多く見られます。しかし、過去のデータを分析すると、下落局面でも積立を継続した投資家の方が、中断した投資家よりも5年後のリターンが高い傾向がありました。
まとめ:基準価額の下落は「売りのサイン」ではない
基準価額が下がったからといって、それだけで売却を決断する必要はありません。大切なのは「なぜ下がったのか」を確認し、自分の投資方針に照らして判断することです。市場全体の一時的な調整であれば、持ち続けることが最も合理的な選択となるケースが多いです。あらかじめ「いくら以上下がったら見直す」というルールを決めておくと、感情的な判断を避けられます。
免責事項・出典
本記事は情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。過去のリターンや利回りは将来の運用成果を保証するものではありません。金融商品の価値は市場環境により変動します。税制・法令・各金融商品の仕様は変更される可能性があるため、最新情報は金融機関・金融庁等の公式サイトをご確認ください。
主な出典(最終確認: 2026年4月): 金融庁 NISA特設ページ、 北陸銀行 投資信託コラム、 三菱UFJ銀行 資産運用コラム、 野村アセットマネジメント 投資信託ゼミナール