Capital Insight 編集部
基準価額とは|1行で理解する
基準価額は、投資信託の1万口あたりの価値を示す価格です。日本では通常「1万口あたり◯◯円」の形で表示され、国際的には同じ概念を「NAV(Net Asset Value)」と呼びます。
株式のように市場で常に変動するものではなく、1日1回、その日の市場終値をもとに運用会社が計算し公表するのが特徴です。本記事では基準価額(NAV)の計算の仕組み・変動要因・見方を初心者向けに整理します。
関連する主要指標として純資産総額とは?、トラッキングエラーとは?、シャープレシオとは?もあわせて参照してください。
基準価額(NAV)の計算式
基準価額 = 純資産総額 ÷ 発行済み口数 × 10,000
日本の投資信託では慣例的に「1万口あたり」で表示するため、最後に10,000を掛けます。国際標準のNAVは「1口あたり」で計算するため、この点が日本の基準価額との表示上の違いです。
計算例
純資産総額 100億円、発行済み口数 1,000万口のファンドの場合:
基準価額 = 100億円 ÷ 1,000万口 × 10,000 = 10,000円(1万口あたり)
翌日、純資産総額が105億円になれば、基準価額は 10,500円(1万口あたり)に上昇します。
NAVと基準価額の違い・関係
| 項目 | 日本の基準価額 | 国際NAV(Net Asset Value) |
|---|---|---|
| 単位 | 1万口あたり | 1口(1 share)あたり |
| 初期値 | 10,000円からスタート | 通常10〜100ドル等から |
| 計算頻度 | 1日1回(営業日) | 1日1回(営業日) |
| 概念 | 同じ(ファンドの1単位あたり価値) | 同じ |
つまり日本の「基準価額」は国際的な「NAV」の日本版とも言え、計算の考え方は同じです。
基準価額が変動する5つの要因
1. 保有資産の時価変動
ファンドが保有する株式・債券等の時価が上昇すれば基準価額は上昇、下落すれば基準価額も下落します。これが最も大きな変動要因です。
2. 配当・利息収入
ファンド内の株式が配当金を受け取る、債券から利息収入が入る——これらが純資産総額を増やし、基準価額を押し上げます。
3. 分配金の支払い
投資信託が投資家に分配金を支払うと、その金額分だけ純資産総額が減少し、基準価額も下落します。分配金型ファンドと無分配型では基準価額の推移が異なります。分配金の仕組みは投資信託の分配金と再投資の仕組みで解説しています。
4. 信託報酬等の費用
信託報酬(運用管理費用)は毎日ファンドから差し引かれ、基準価額を少しずつ押し下げます。年率1%の信託報酬なら、1日あたり約0.003%分が控除されます。
5. 為替変動(海外資産の場合)
海外株式・海外債券を保有するファンドでは、円と外貨の為替レート変動も基準価額に影響します。為替ヘッジの有無で影響の大きさが変わります。詳細は為替ヘッジありとなしの違いを参照してください。
基準価額の見方|重要な3つのポイント
1. 基準価額の絶対値は「良し悪し」を示さない
「基準価額が高いファンド=優れている」ではありません。設定から20年経過したファンドは基準価額が2倍以上になっていることもあれば、分配金を出してきたため設定時の10,000円に近いままのファンドもあります。
同じ基準価額でも、「設定時期」「過去の分配金」「運用方針」が異なるため、絶対値だけでは評価できません。
2. 高い基準価額のファンドは割高なわけではない
基準価額30,000円のファンドと10,000円のファンドを比べて「30,000円の方が割高」というのは誤解です。基準価額は「過去にどれだけ成長したか」の記録であり、今後の値動きとは独立した数値です。
3. 見るべきは「騰落率」
基準価額の良し悪しを判断するのは、過去1年・3年・5年の騰落率(どれだけ上昇/下落したか)です。運用会社の月次レポートや証券会社の投信ページで期間別の騰落率が公表されています。
基準価額の公表タイミング
日本の投資信託の基準価額は、毎営業日の市場終値を基に、その日の夜〜翌営業日朝に公表されるのが一般的です。
- 国内資産のみのファンド:当日15:00頃までの取引を基に、その日の夜に公表
- 海外資産を含むファンド:前日の海外市場終値を基に計算。翌営業日に反映
このため、申込み時点では「その日の基準価額」は確定していません。「ブラインド方式」と呼ばれ、買付けた後で基準価額が確定する仕組みになっています。
基準価額と市場価格の違い(ETFの場合)
通常の投資信託は基準価額で売買されますが、ETFは市場で取引されるため、基準価額と市場価格が異なる場合があります。
| 項目 | 通常の投資信託 | ETF |
|---|---|---|
| 売買価格 | 基準価額 | 市場価格(基準価額と乖離することあり) |
| 売買タイミング | 1日1回(ブラインド方式) | 取引時間中いつでも |
| 価格の透明性 | 1日後に確定 | リアルタイム |
ETFの市場価格は通常は基準価額とほぼ同水準ですが、流動性の低いETFや市場急変時は乖離することがあります。米国ETFの詳細は米国ETFおすすめ5選を参照してください。
基準価額が下がったときの考え方
基準価額が購入時より下がっている場合、以下の観点で判断します。
一時的な市場変動の影響
株式市場全体の下落局面(リーマンショック・コロナショック等)では、多くのファンドの基準価額が下落します。長期投資前提であれば、一時的な下落で慌てて売却せず、継続保有を検討するのが基本です。
ファンド特有の問題
他の同じ指数連動ファンドが上昇している中で、自分のファンドだけ大きく下落している場合、運用方針やトラッキングエラーに問題がある可能性があります。
構造的な下落
毎月分配型ファンドで、分配金支払い+信託報酬差引の影響で基準価額が長期的に右肩下がりになっているケースもあります。この場合はファンドの選び方自体を見直す必要があります。
基準価額が下がったときの対処は投資信託の基準価額が下落したときの対処法で詳しく解説しています。
基準価額の確認方法
- 各運用会社の公式サイト:最も正確で詳細
- 証券会社の投信検索ページ:SBI証券・楽天証券・マネックス証券等で閲覧可能
- 投資信託協会のサイト:公式統計情報
- モーニングスター等の第三者評価サイト:チャート・履歴が見やすい
- ファンドの月次レポート:月次の基準価額と累計騰落率
基準価額と累計リターンの違い
累計リターンは「分配金も含めた総収益」を示す指標で、基準価額とは別物です。
- 基準価額:現在のファンドの1万口あたり価値(分配金後)
- 累計リターン:投資した資金が分配金込みで何%に成長したか
毎月分配型ファンドのように、基準価額が下がっても累計リターンは正になっている(分配金が大きいため)ケースもあります。
筆者視点:基準価額は「健康診断の体温計」
筆者が投資信託の運用データを観察してきた中で、基準価額は「ファンドの日々の体温を示す指標」だと感じます。高い・低いで判断するのではなく、「設定時からの変化」「他の同種ファンドとの比較」「過去3年・5年の推移トレンド」の3軸で見るのが実務的な活用方法です。
初心者が見落としがちなのは、「基準価額20,000円のファンドは10,000円のファンドより2倍儲かっている」という誤解です。設定時期が違えば比較にならず、分配金の有無でも大きく差が出ます。基準価額の絶対値ではなく、「期間別の騰落率」こそが実質的なパフォーマンスを示す数値です。
よくある質問(FAQ)
基準価額が高いファンドは買わない方が良いですか?
基準価額の絶対値だけで判断するのは誤りです。20,000円のファンドでも今後上昇する可能性はあり、10,000円のファンドでも下落する可能性があります。騰落率・運用方針・信託報酬で総合判断するのが基本です。
基準価額が10,000円を下回ると「元本割れ」ですか?
ほとんどのファンドの設定時の基準価額は10,000円です。ただし、あなたが購入したタイミングの基準価額を基準に損益が決まるため、「10,000円を下回る=元本割れ」とは限りません。購入時の価格との比較で判断する必要があります。
基準価額は毎日変動しますか?
はい。基準価額は毎営業日、その日の市場終値を基に1日1回計算・公表されます。土日祝日や市場休場日は変動しません。
基準価額はどこで確認できますか?
運用会社の公式サイト、証券会社の投信ページ、投資信託協会のサイト、モーニングスター等で確認できます。過去の推移グラフも見られるため、比較検討がしやすいです。
ETFの市場価格と基準価額はなぜ違うのですか?
ETFは市場で取引されるため、需給バランスによって基準価額と市場価格に若干の乖離(プレミアム・ディスカウント)が発生します。通常は小さい乖離ですが、流動性の低い時間帯や市場急変時には広がることがあります。
免責事項・出典
本記事は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品・ファンドの購入・売却を推奨・勧誘するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。記載の計算例・基準価額水準は一般的な情報で、実際の数値は市場環境により変動します。過去の基準価額は将来の運用成果を保証するものではありません。
主な出典(最終確認: 2026年4月): 金融庁 NISA特設ページ、 金融庁 金融商品取引業者登録一覧、 財務省(金融関連)、 日本銀行(金融統計)