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トラッキングエラーとは?目安と計算方法・インデックスファンド選びでの使い方【2026年版】

2026/4/17

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トラッキングエラーとは?目安と計算方法・インデックスファンド選びでの使い方【2026年版】

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Capital Insight 編集部

2026/4/17 公開

トラッキングエラーとは|1行で理解する

トラッキングエラーは、「インデックスファンドが連動対象指数からどのくらい乖離しているか」を示す指標です。例えば「eMAXIS Slim S&P500」なら、S&P500指数との収益差の大きさを測ります。

  • トラッキングエラーが小さい:指数にぴったり連動できている(良い)
  • トラッキングエラーが大きい:指数から乖離している(要確認)

本記事では、トラッキングエラーの計算の考え方・目安・インデックスファンド選びでの使い方を初心者向けに解説します。関連指標としてシャープレシオとは?標準偏差の投資での意味と見方もあわせて参照してください。

トラッキングエラーの計算の考え方

正確な計算は「ファンドのリターン − 指数のリターン」の差(超過リターン)を集計し、その標準偏差を年率換算します。

トラッキングエラー = 超過リターン(ファンド − 指数)の年率標準偏差

実務では各運用会社のファンド月次レポート・第三者評価サイトで数値が公表されているため、自分で計算する必要はほぼありません。

トラッキングエラーの目安

ファンド種別合理的なトラッキングエラーの目安
主要インデックスファンド(TOPIX・S&P500・MSCIコクサイ等)0.1〜1%程度
海外ETF(Vanguardシリーズ等)0.05〜0.5%程度
新興国・小型株インデックスファンド1〜3%程度
特殊な指数(レバレッジ型等)3%超も
エンハンスト・インデックスファンド4〜8%(意図的に指数を上回る運用のため)

※目安は一般的な水準で、市場環境・ファンド設定条件により変動します。

2022年末時点の日経平均連動型ファンドでは過去1年のトラッキングエラー平均が1.08%、過去10年では0.89%と、運用期間が長くなるほどトラッキングエラーは小さくなる傾向が観測されています。

トラッキングエラーが発生する5つの要因

1. 信託報酬

信託報酬は毎日ファンドから差し引かれるため、その分だけ指数リターンから下方に乖離します。信託報酬0.1%のファンドは、理論上、指数を年0.1%下回る傾向があります。信託報酬の詳細は信託報酬とは?目安はいくら?を参照してください。

2. キャッシュポジション

ファンドは申込・解約に対応するため、ある程度の現金を保有します。現金部分は指数に連動しないため、リターンが指数からずれる要因になります。

3. 売買タイミング

指数構成銘柄の入替時、ファンドが瞬時に売買できないことがあるため、短期のズレが発生します。

4. 配当金の再投資タイミング

配当金を受け取ってから再投資するまでにタイムラグがあり、その期間のリターンが指数とずれます。

5. 税金・為替コスト

海外資産に投資するファンドは、配当に対する海外源泉徴収や為替変換コストが発生し、トラッキングエラーの要因になります。

トラッキングエラーとトラッキングディファレンスの違い

似た用語に「トラッキングディファレンス」があります。両者の違い:

  • トラッキングエラー:ファンドと指数のリターン差の「標準偏差」(ばらつきの大きさ)
  • トラッキングディファレンス:ファンドと指数のリターン差の「平均値」(どれだけ下回ったか)

投資家が実質的に気にすべきは「どれだけ指数を下回ったか」で、これはトラッキングディファレンスに該当します。トラッキングエラーは「連動の正確さのばらつき」を示す指標です。

トラッキングエラーを下げる仕組み

低コストのインデックスファンドでは、以下の工夫でトラッキングエラーを抑えています。

  • 現物運用:指数構成銘柄を実際に保有(複製法)
  • サンプリング運用:主要構成銘柄のみ保有し、コストと連動性のバランスを取る
  • 先物の活用:一時的にキャッシュ部分を先物で指数エクスポージャーを確保
  • スケールメリット:大規模なファンドほど売買コストが相対的に小さく、連動性が高まる

インデックスファンド選びでの使い方

ステップ1:連動指数が同じファンド同士で比較

例:eMAXIS Slim S&P500 vs SBI・V・S&P500 vs 楽天・S&P500インデックスファンド。同じ指数に連動するファンド同士でトラッキングエラーを比較します。

ステップ2:信託報酬との合わせ技で評価

信託報酬が低い+トラッキングエラーが小さい=「指数通りの値動きを低コストで実現しているファンド」という評価になります。

ステップ3:過去3〜5年のデータを確認

短期(1年)のトラッキングエラーは偶然性が高いため、3〜5年の長期データで安定性を確認するのが基本です。

ステップ4:純資産総額も合わせて確認

純資産総額が大きいファンドは運用の柔軟性が高く、トラッキングエラーが相対的に小さい傾向があります。純資産総額が極端に少ないファンドは避けた方が良いでしょう。投資信託選びの全体像は投資信託 選び方 完全ガイド2026で整理しています。

トラッキングエラーの注意点

1. 小さい=絶対良いではない

トラッキングエラーがゼロに近くても、「指数自体が下落すればファンドも下落する」のは変わりません。指数との連動性の指標であり、絶対的なパフォーマンスを示すものではありません。

2. 指数の特性を理解する

トラッキングエラーが小さくても、連動する指数が自分の投資目的に合わないなら意味がありません。「指数選び」が先、「その指数への連動性」は後という順序が正しい選び方です。

3. エンハンスト型は別基準

「エンハンスト・インデックスファンド」は、意図的に指数を上回るリターンを狙う運用方針のため、トラッキングエラーが大きくなります。これらのファンドではトラッキングエラーの大きさは問題ではなく、超過リターンが得られているかが評価軸です。

4. マイナスの超過リターンの継続

長期でトラッキングエラーが大きく、かつ指数を下回るリターンが続いているファンドは、運用効率に問題がある可能性があります。

代表的なインデックスファンドのトラッキングエラー水準

主要インデックスファンド(S&P500・全世界株式・TOPIX等)は、年間0.1〜0.5%程度のトラッキングエラーに収まっているものが多く、実用上は指数との連動性に大きな問題はありません。

  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):過去の実績では小さいトラッキングエラー水準
  • SBI・V・S&P500:米国ETF(VOO)を通じた運用で連動性が高い
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):主要インデックスファンドとして低いトラッキングエラー

※実際の数値は各運用会社の最新月次レポートでご確認ください。銘柄詳細はeMAXIS Slim 全世界株式の評判S&P500とオルカンはどっちがいい?を参照してください。

ETFと投資信託のトラッキングエラー比較

ETFは市場で売買されるため、「基準価額」と「市場価格」の乖離も発生します。この乖離は広義のトラッキングエラーの一部ですが、大規模なETF(Vanguardシリーズ等)では通常0.1%前後に収まる傾向があります。

米国ETFの始め方は米国ETFおすすめ5選で解説しています。

筆者視点:トラッキングエラーは「地味な品質管理指標」

筆者がインデックスファンドの運用データを観察してきた中で、トラッキングエラーは「派手ではないが、長期運用で最終的なリターン差に反映されやすい品質管理の指標」だと感じます。年率0.5%のトラッキングエラー差は、短期では目立たない違いですが、30年の複利計算では元本の10%以上の差に拡大することがあります。

信託報酬と同じく、トラッキングエラーも「なるべく小さいファンドを選ぶ」のが王道です。ただし0.1%以下の差を追求するより、0.5%未満に収まっていれば十分という現実的な基準で選ぶと、ファンド選びに時間をかけすぎずに済みます。

よくある質問(FAQ)

トラッキングエラーはどこで確認できますか?

各運用会社のファンド月次レポート、証券会社の投信検索ページ、モーニングスター等の第三者評価サイトで確認できます。「過去1年」「過去3年」「過去5年」など期間別に掲載されていることが多いです。

トラッキングエラーがゼロのファンドはありますか?

完全にゼロは不可能です。信託報酬・キャッシュポジション・売買コスト等で最低でも0.05〜0.1%程度は発生します。「業界最低水準」のファンドでも0.1〜0.5%程度が実態です。

同じ指数に連動する複数のファンドで、どれを選ぶべきですか?

信託報酬が低い+トラッキングエラーが小さい+純資産総額が大きい、の3条件を満たすファンドが選ばれやすい傾向があります。主要インデックスでは、eMAXIS Slimシリーズ・SBI・Vシリーズ等が該当します。

トラッキングエラーが2%を超えるファンドは避けるべきですか?

通常のインデックスファンドで2%超は大きい部類です。ただしエンハンスト型・新興国・小型株等の特殊なファンドでは2%超が標準的な場合もあるため、ファンド種別を確認することが重要です。

ETFと投資信託、どちらがトラッキングエラーが小さいですか?

一般的にはETFの方が小さい傾向があります。ただし大規模なインデックス投信(eMAXIS Slim等)は差がほぼなくなっており、自動積立のしやすさで投信を選ぶのも合理的な選択です。

免責事項・出典

本記事は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品・ファンドの購入・売却を推奨・勧誘するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。記載のトラッキングエラー目安・計算例は一般的な水準で、ファンド・市場環境により実際の数値は変動します。過去のトラッキングエラーは将来の運用成果を保証するものではありません。

主な出典(最終確認: 2026年4月)金融庁 NISA特設ページ金融庁 金融商品取引業者登録一覧財務省(金融関連)、 日本銀行(金融統計)

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