Capital Insight 編集部
投資信託にかかる手数料の全体像
投資信託には主に3種類の手数料がかかります。これらのコストを把握することは、長期投資の結果に影響する要素の一つとされます。
3つの手数料の概要
| 手数料の種類 | タイミング | 概要 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 購入時手数料(販売手数料) | 購入時 | ファンドを買う際に販売会社に支払う手数料 | 0%〜3%(ノーロードなら無料) |
| 信託報酬(運用管理費用) | 保有中(毎日) | ファンドの運用・管理にかかる費用。純資産から自動的に差し引かれる | 年率0.05%〜2%程度 |
| 信託財産留保額 | 売却時 | ファンドを解約する際に差し引かれる費用 | 0%〜0.5%(無料のファンドも多い) |
この中で影響が大きいのが信託報酬です。購入時手数料と信託財産留保額は1回限りのコストですが、信託報酬は保有期間中ずっとかかり続けるため、長期保有ではリターンに与える影響が積み重なる傾向があります。
信託報酬の仕組み
信託報酬は、投資信託を保有している間に毎日かかる運用管理費用です。ファンドの純資産から自動的に差し引かれるため、投資家が別途支払う手続きは不要ですが、リターンから実質的に差し引かれるコストです。
信託報酬の内訳
信託報酬は以下の3者に配分されます。
- 運用会社:ファンドの運用を行う対価(例:三菱UFJアセットマネジメント)
- 販売会社:ファンドの販売・顧客対応の対価(例:SBI証券、楽天証券)
- 受託会社:信託財産の管理・保管の対価(例:三菱UFJ信託銀行)
信託報酬の目安
| ファンドタイプ | 信託報酬の目安 | 傾向 |
|---|---|---|
| 低コストインデックスファンド | 0.05%〜0.2% | 長期保有のコスト負担が抑えられやすい |
| 一般的なインデックスファンド | 0.2%〜0.5% | ファンドにより幅がある |
| アクティブファンド | 1.0%〜1.5% | 運用成果とコストのバランスを比較 |
| 高コストアクティブファンド | 1.5%〜2.0%以上 | 長期保有ではコスト負担が大きい |
2026年の水準では、インデックスファンドの信託報酬は年率0.1%以下を「低コスト水準」と見る向きが多いとされます。
実質コスト(信託報酬以外のコスト)
投資信託のコストを正確に把握するには、信託報酬だけでなく「実質コスト」を確認することが必要です。
実質コストの構成
| コスト項目 | 事前に確認可能か | 内容 |
|---|---|---|
| 信託報酬 | 可能(目論見書に記載) | 運用・管理の基本コスト |
| 売買委託手数料 | 事後のみ(運用報告書) | ファンド内で株式等を売買する際の手数料 |
| 有価証券取引税 | 事後のみ | 海外株式の売買にかかる税金 |
| 保管費用 | 事後のみ | 海外資産の保管にかかる費用 |
| 監査費用 | 事後のみ | ファンドの会計監査にかかる費用 |
信託報酬以外のコストは、各ファンドの「運用報告書(全体版)」で確認できます。実質コストは年1回の報告書で開示されるため、過去の実績データを参照することが必要です。
隠れコストが大きくなるケース
- 新興国株式ファンド:取引コストや保管費用が先進国より高い傾向
- 純資産が小さいファンド:固定費の負担割合が大きくなりやすい
- 頻繁にリバランスするファンド:売買回数が多いほどコストが増える
人気ファンドの信託報酬比較【投資対象別】
以下の信託報酬は2026年4月時点の各運用会社の公開情報に基づきます。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
全世界株式ファンド
| ファンド名 | 信託報酬 |
|---|---|
| eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 0.05775% |
| たわらノーロード 全世界株式 | 0.05775% |
| 楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド | 0.0561% |
| はじめてのNISA・全世界株式インデックス | 0.05775% |
米国株式(S&P500)ファンド
| ファンド名 | 信託報酬 |
|---|---|
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 0.09372% |
| SBI・V・S&P500インデックス・ファンド | 0.0938% |
| 楽天・S&P500インデックス・ファンド | 0.077% |
| はじめてのNISA・米国株式インデックス | 0.09372% |
先進国株式ファンド
| ファンド名 | 信託報酬 |
|---|---|
| eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 0.09889% |
| ニッセイ外国株式インデックスファンド | 0.09889% |
| たわらノーロード 先進国株式 | 0.09889% |
同じ指数に連動するファンド同士では信託報酬の差は小さい水準にあります。ただし、わずかな差でも20〜30年の長期では累積金額に差が生じる計算になります。
信託報酬の差が長期リターンに与える影響(試算)
「0.1%の差」は小さく見えても、複利効果により長期では累積する計算になります。以下は年率5%という仮定値を前提とした試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。
100万円を年率5%で運用した場合の試算
| 信託報酬 | 10年後 | 20年後 | 30年後 |
|---|---|---|---|
| 0.1% | 約160万円 | 約260万円 | 約418万円 |
| 0.5% | 約155万円 | 約240万円 | 約374万円 |
| 1.0% | 約148万円 | 約219万円 | 約324万円 |
| 差額(0.1% vs 1.0%) | 約12万円 | 約41万円 | 約94万円 |
前提どおりに推移した場合、信託報酬0.1%と1.0%の差は30年後に約94万円の試算上の差となります。毎月の積立投資ではさらに累積する計算です。
英語圏の投資メディアでも「expense ratio is one of the most important factors when choosing an index fund, as lower costs leave more of the return for the investor」(経費率はインデックスファンド選びにおいて重要な要素の一つとされ、低コストほど投資家に残るリターンが大きいという見方が紹介されることが多い)と解説されています。海外の投資制度・税制は日本と異なるため、国内での判断は国内機関の情報を参照してください。
コスト比較の際の留意点
留意点1:信託報酬だけでなく実質コストを確認する
信託報酬が低くても、隠れコストが大きければ実質コストは信託報酬より高くなることがあります。特に新興国株式ファンドは隠れコストが大きくなりやすいため、運用報告書で実質コストを確認することが求められます。
留意点2:純資産総額が小さいファンド
純資産が小さいファンドは、固定費の負担割合が大きくなるため実質コストが上がりやすく、繰上償還のリスクもあります。信託報酬水準だけで判断せず、純資産総額も併せて確認する必要があります。
留意点3:コスト競争は継続中
2026年もSBIアセットマネジメントが複数ファンドの信託報酬引き下げを実施するなど、低コスト競争は続いています。eMAXIS Slimシリーズは運用会社が公式に「業界最低水準の運用コストを将来にわたって目指し続ける」との方針を掲げており、競合が下げれば追随する動きが報告されてきました(将来の方針変更の可能性は否定できません)。
留意点4:コストのみで判断しない
信託報酬の差が0.01%程度であれば、純資産総額の大きさや運用実績の安定性も判断材料に含める考え方があります。
ノーロード(購入時手数料無料)ファンド
2026年現在、ネット証券ではほとんどの投資信託が購入時手数料無料(ノーロード)で購入できます。同じファンドでも銀行の窓口で購入すると2〜3%の手数料がかかる場合があるため、購入チャネルによってコストが大きく異なる点に留意が必要です。
たとえば100万円分のファンドを購入時手数料3%で購入すると、3万円が手数料として差し引かれ、実際に投資に回るのは97万円となります。ノーロードなら100万円がそのまま投資元本となります。この差は長期投資の初期元本に影響する要素です。
まとめ
投資信託の手数料・信託報酬は、長期投資のリターンに影響する要素の一つです。信託報酬は保有期間中ずっとかかり続けるため、長期ではわずかな差でも累積する傾向があります。
ファンドを比較する際の観点の例として、以下が挙げられます。
- 購入時手数料:ノーロードファンドを選ぶと初期コストを抑えやすい
- 信託報酬:同じ指数に連動するファンドを比較する際、年率0.1%以下を低コストの目安とする見方がある
- 実質コスト:運用報告書で隠れコストを含めた総コストを確認する
最終的なファンド選定はご自身の投資方針とリスク許容度、信託報酬以外の要素(純資産総額・運用実績・販売会社の利便性等)を総合的に勘案してご判断ください。
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免責事項・出典
本記事は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨・勧誘するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。過去のリターンや利回りは将来の運用成果を保証するものではなく、金融商品の価値は市場環境により変動します。当メディアは金融商品取引業者ではなく、個別の投資助言は提供しておりません。税制・法令・各金融商品の仕様は変更される可能性があるため、最新情報は金融機関・金融庁等の公式サイトをご確認ください。
主な出典(最終確認: 2026年4月):金融庁 NISA特設ページ、国税庁 No.1535 特定口座制度、各運用会社の公式目論見書・運用報告書。