Capital Insight 編集部
NISAの非課税枠は売却で復活する仕組み
新NISAの特徴の一つが、売却すると非課税保有限度額(1,800万円の枠)が復活する仕組みです。一度使った非課税枠を再利用できる設計です(制度詳細は金融庁 NISA特設ページをご確認ください)。
さらに2026年度の制度改正により、枠の復活タイミングが「翌年」から「当年中」に前倒しされました。これにより、年内でのポートフォリオ見直しや商品の入れ替えが可能となります。
本記事では、非課税枠の復活ルールと、売却を検討する際の観点を解説します。
非課税枠復活の基本ルール
復活するのは「生涯枠」で「年間枠」ではない
NISAには2種類の枠があります。
| 枠の種類 | 上限 | 売却で復活するか |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 360万円/年(つみたて120万+成長240万) | 復活しない。年間360万円は年度ごとの上限 |
| 非課税保有限度額(生涯枠) | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円) | 復活する。売却した分の枠が再利用可能 |
「売却すれば年間360万円以上投資できる」という誤解がありますが、年間投資枠は売却しても増えません。復活するのは1,800万円の生涯枠のみです。
復活する金額は「取得価額(簿価)」ベース
復活する金額は売却時の時価ではなく、購入時の価格(取得価額)で計算されます。
具体例
- 100万円で購入した商品が150万円に値上がりして売却 → 復活する枠は100万円(150万円ではない)
- 100万円で購入した商品が80万円に値下がりして売却 → 復活する枠は100万円(80万円ではない)
含み益・含み損の有無にかかわらず、復活する枠は常に購入時の金額となる設計です。
【2026年改正】枠の復活タイミングが「当年中」に
2026年度の制度改正で、非課税枠の復活タイミングが変更されました。
| 旧ルール(〜2025年) | 新ルール(2026年〜) | |
|---|---|---|
| 復活タイミング | 売却した翌年 | 売却した当年中 |
| 影響 | 年内のスイッチングに枠の制約あり | 年内でのポートフォリオ入替が可能 |
旧ルールの制約
以前は2025年に商品Aを売却しても、復活した枠が使えるのは2026年からでした。「保有商品を別の商品に入れ替えたい」場合、年をまたがないとできない仕組みでした。
新ルールの変更点
2026年からは商品を売却するとその年のうちに枠が復活します。これにより以下が可能となります。
- ポートフォリオのリバランスが年内に完結できる
- 商品の乗り換え(信託報酬が高いファンドから低いファンドへの切替等)が年内に実施可能
- 利益確定と再投資のサイクルを1年以内に回せる
英語圏の在日投資家コミュニティでも「reusable limit feature(再利用可能な枠機能)」として紹介されており、海外の類似制度にはない日本の制度特性とされます。海外の制度・税制は日本と異なるため、国内での判断は国内機関の情報を参照してください。
年間投資枠の制約は残る
生涯枠が当年中に復活しても、年間投資枠(360万円)は超えられません。例えば:
- 1月〜6月で360万円分を購入(年間枠を使い切り)
- 7月に100万円分を売却(生涯枠100万円が復活)
- → 復活した100万円をその年中に再投資することはできない(年間投資枠を既に使い切っているため)
このケースでは、復活した枠を使えるのは翌年以降となります。
売却を検討する場面
新NISAは非課税期間が無期限の設計のため、売却タイミングに急ぐ必要はありません。以下のケースでは売却を検討する観点があります。
売却を検討する5つの場面
- 目標金額に達した場合:「教育費として500万円」等の具体的な目標を達成した場合
- ライフイベントで資金が必要な場合:住宅購入の頭金、結婚資金、転職期間中の生活費等
- ポートフォリオを見直す場合:信託報酬の低いファンドへの乗り換え。2026年からは当年中のスイッチングが可能
- 投資方針が変わった場合:米国集中から全世界分散への変更等
- 資産のリバランスが必要な場合:株式の比率が想定より高くなった場合の一部売却等
売却を慎重に判断する場面
- 短期の値下がり時:つみたて投資は長期運用を前提とする設計。一時的な下落での売却はドルコスト平均法の効果を失う可能性
- 利益確定を急ぐ場面:NISAは非課税期間無期限のため、他のきっかけがない利益確定は長期の複利効果を途切れさせる可能性
- SNS等の情報への反応:「暴落する」「売るべき」等の情報に左右されず、自身の投資方針に基づいた判断が求められる
スイッチングの活用例(2026年版)
2026年からの「当年中復活」を活かした活用例を紹介します。
ケース1:信託報酬の低いファンドへの乗り換え
NISA開始当初に購入した信託報酬0.2%のファンドから、信託報酬0.05%のファンドに乗り換える場合:
- 旧ファンドを売却(非課税で利益確定)
- 当年中に枠が復活
- 復活した枠で新ファンドを購入(年間投資枠の範囲内で)
信託報酬0.15%の差は、1,000万円の運用で年間15,000円、20年間で約30万円の試算上の差となります(将来の運用成果を保証するものではありません)。
ケース2:教育費のための一部売却と再投資
- 子どもの大学入学費用として300万円分を売却
- 生涯枠300万円が当年中に復活
- 翌月以降の積立で、復活した枠を使って再び投資
受渡日に関する留意点
株式や投資信託の売却は、約定日(注文が成立した日)ではなく受渡日(決済が完了する日)で処理されます。
- 投資信託:約定日の翌営業日〜数営業日後が受渡日
- 国内株式:約定日の2営業日後が受渡日
12月下旬に売却する場合は受渡日が翌年にまたがる可能性があり、その年の売却として扱われない場合があります。年内決済を希望する場合は、12月中旬までに売却注文を出すことが求められます。
中国語圏のNISA解説でも「年度額度は年度限定で、使い切れなかった分の繰り越しは不可」と注意喚起されています。
よくある疑問
「売却して枠を復活させて買い直す」を繰り返すと、生涯枠を超えて投資できるか?
累計購入額が生涯枠1,800万円を超えることは可能です。例えば1,800万円投資→全額売却→翌年にまた1,800万円投資すれば、累計3,600万円投資したことになります。ただし同時に保有できる非課税枠は常に1,800万円まで、年間投資枠360万円の制約もあります。
つみたて投資枠と成長投資枠の商品は混在売却できるか?
どちらの枠で購入した商品も売却可能です。復活する枠はそれぞれの枠に戻る設計です(つみたて枠で購入した商品を売却すれば、つみたて枠が復活)。
まとめ
- 売却で生涯枠(1,800万円)は復活:年間投資枠(360万円)は復活しない
- 復活する金額は「取得価額」ベース:売却時の時価ではなく購入時の価格で計算
- 2026年改正で「当年中復活」が可能に:ポートフォリオ入替えが年内で完結
- 売却検討の場面:目標達成、ライフイベント、商品見直し、投資方針変更、リバランス等
- 12月下旬の売却は受渡日に注意:年内決済には12月中旬までに注文が必要
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免責事項・出典
本記事は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨・勧誘するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。過去のリターンや利回りは将来の運用成果を保証するものではなく、金融商品の価値は市場環境により変動します。当メディアは金融商品取引業者ではなく、個別の投資助言は提供しておりません。税制・法令・各金融商品の仕様は変更される可能性があるため、最新情報は金融機関・金融庁等の公式サイトをご確認ください。
主な出典(最終確認: 2026年4月):金融庁 NISA特設ページ、国税庁 No.1535 特定口座制度。